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映画『もののけ姫』 ― アシタカと現代の若者 ―
監督:宮崎駿 / 製作総指揮:徳間康快 / 製作:氏家齋一郎、成田豊 / プロデューサー:鈴木敏夫 / キャスト:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、西村雅彦 / 製作年:1997年 / 製作国:日本 / 配給:東宝 / 上映時間:133分
ジブリ作品の中で何が一番好きかという話題になると、私がいつも答えるのは『もののけ姫』だ。
映画『もののけ姫』は、1997年に公開された宮崎駿監督の長編アニメーション作品であるが、単なる文明批判や環境破壊批判に終わることのない複雑な価値観が提示されていると思う。
その価値観は、映画公開当時の宮崎駿監督へのインタビューからも分かる。
「自然はいいものだというふうな自然観だけでは、実は人間と自然が折り合いをつけて生きていくという考え方は本当は生まれないんじゃないかという気がしているんです」(1997年5月7日 産経新聞夕刊より)
「人間が普通につつましく暮らしている分には自然と共存できて、ちょっと欲張るからだめになるということではなく、つつましく暮らしている事自体が自然を破壊しているんだっていう認識にたつと、どうしていいかわからなくなる。どうしていいかわからないところに一回行って、そこから考えないと環境問題とか自然の問題はだめなんじゃないかなって思うんです」(劇場パンフレットより)
自然環境を破壊するのは悪だと言って批判することは簡単かもしれないが、人間が生きることが、自然環境を破壊することに繋がる。
そこには単純な善悪二分論では片付けられない問題がある。
アシタカと現代の若者が置かれた状況
私は、初めてこの映画を観たとき、主人公であるアシタカのとる行動にとても不信感を抱いた。
アシタカの住む村は昔の日本(劇中の時代設定は室町時代となっている)を思わせる、非文明的で自然と人間が共生しているような場所であり、そこへタタリ神が襲うシーンから映画は始まっている。
アシタカは西の国で何か悪いことが起こっていることを察し、西の国へ旅立つことになるのだが、西の国では、タタラ場の女頭領エボシが村の発展を目論み、森林の伐採や動物の殺戮などを繰り返していた。
一方で、西の国へ行く道中、自然を破壊しようとするエボシ等と戦うサンと山犬に出会い、アシタカに対し憎しみのこもる眼差しを向ける。
ここに「自然対人間」という構図が浮かび上がる。
しかしアシタカのとる立場は曖昧で、自然を破壊するエボシの側に味方したり、エボシと戦い自然を守ろうとするサンの側に回ったりとはっきりしない。
この点に、当初私は違和感を感じていたが、最近はアシタカこそ現代の若者が直面する問題を象徴する存在なのではないかと思っている。
一昔前までは、何が正しくて何が悪いかという考えを誰もが持つことができたかもしれない。
しかし、多様な価値観が浮き彫りとなってきた現代では、ものごとの持つ良い面と同時に悪い面が必ず存在することを認識してしまう。
環境破壊は悪いかもしれない。しかしそれによって人間は文明を発展させ生きているのも事実である。
今後政治的にも経済的にも益々グローバル化していく社会の中で、このような状況はいたる所で起こってくるだろう。
今の若者には、混沌とした価値観の中で、自分の強い意志を持ち周りと折り合いを付けていくアシタカのような能力が重要になってくるのかもしれない。
【関連サイト】
【知らないと損する!?】”もののけ姫”の都市伝説集【ジブリ】 – NAVER まとめ
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