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映画『きっと ここが帰る場所』 ― シャイアンの止まった時間 ―
監督:パオロ・ソレンティーノ / 脚本:パオロ・ソレンティーノ、ウンベルト・コンタレッロ / 撮影:ルカ・ビガッツィ / 美術:ステファニア・セラ / キャスト:ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、イブ・ヒューソン、ケリー・コンドン / 原題:This Must Be the Place / 製作年:2011年 / 製作国:イタリア・フランス・アイルランド合作 / 配給:スターサンズ / 上映時間:118分
映画『きっと ここが帰る場所』は、2012年に公開されたショーン・ペン主演のユーモラス作品だ。
ショーン・ペン演じるシャイアンは、かつての人気ロックスターであったが、すでに引退し、隠遁生活を送っている。
しかし、ロックスター時代の様は変えることなく、派手なメイクが年に不釣合いで面白い。
一見して、ストーリーが飲み込みずらく感じたが、ふとしたときに「何かがおかしい」というシャイアンの口癖や、テーマソングの「This Must Be The Place」(デヴィッド・バーン)などが映画独特の世界観を作り上げていて、妙に心に沁みた。
シャイアンは、あるとき30年以上も会っていない父の危篤を知らされ会いに行くことにした。
しかし、結局臨終には間に合わなかった。
葬儀の後、ホロコーストを生き延びた父を辱めに合わせたナチス隊員ランゲの存在を知り、彼を探す旅に出るのだが…。
シャイアンの止まった時間
映画の中で、シャイアンは幾度か「何かがおかしい」とつぶやく。
何の脈絡もなく、シャイアンが感じ取ったまでのことなのだろうが、私は何かここに共感できるものを感じてしまう。
何気なく過ごしている日常の中で、ふと気づいてみると「何かがおかしい」と思うことがある。
それは一体なぜなのだろう。
シャイアンは、今はもう人気ロックスターではないのに、派手な化粧やファッションに身を包み生活を送っている。
かつては、多くのファンに囲まれて、黄色い歓声を浴びるような人気者だったのだろうか。
しかし、すでにロックは引退し、月日は流れていく。
それでも自分を変えようとしないシャイアンは、まるで思い出の中を生きているようだ。
人は、昔の良い出来事や、若かりし頃の思い出にいつまでも浸っていたいと感じると思う。
思い出は、いくらときが経とうと変わることはない。
輝かしい日々の思い出に浸り続けて生きていけたら、どんなに幸せだろうか…。
しかしそれでも、日常は1日1日確実に変化していく。
気づけば変わっていないのは自分だけ。
自分だけが周りに取り残され、年を取ったことにも気づかなかったり、気づこうとしなかったり。
子どものまま時間が止まってしまう。
シャイアンの時間もやはりロックスター時代のまま止まってしまったのだろうか。
しかし、ランゲを探す旅から戻ってきたシャイアンは、再び彼の時間を動かしていた。
きっとそこがシャイアンの帰るべき場所なのだろう。
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